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持続研通信 No.71 芙蓉号

京都・風伝館のアクアリウム


みなさま、こんにちは。アミタ持続研の島津です。
梅雨が開けたとたん、一斉にけたたましく鳴きはじめる蝉たち。彼らの鳴き声を聞いていると、限りある命のはかなさというか、無常さを感じて脱力してしまうのは私だけでしょうか。単に暑さで力が入らないだけかもしれません。ともかく、みなさまもこの暑さにやられません様、どうぞご自愛くださいませ。

さて、今回の持続研通信・芙蓉号は、南三陸BIOでの話題やアミタグループからのお知らせ、そして最後に涼やかな雑記を一本お届けします。
どうぞご一読ください。

南三陸BIO 町内の小中学生の見学を受入れています


南三陸BIOでは、6月7日に開催された南三陸町教育委員会主催『平成28年度南三陸町ふるさと学習会「春」』の一環として、同町小学生を対象としたバイオガス施設「南三陸BIO」への見学を受入れました。

この日は100名余りの小学6年生が、家庭から出た生ごみをエネルギーに変えるバイオガス施設を見学し、資源循環の大切さを学びました。
見学した子供たちからは「ごみが資源になることが分かった。これからは自分たちも分別に協力していきたい」「家族にも教えたい」など嬉しいコメントをいただきました。


翌週は中学1年生80名の見学も実施しました。BIOの施設見学に限らず、町内の小学校や保育園へ出かけて行き、循環の話をすることもたびたびあります。

彼らが大人になる10年後、20年後には、ごみ(資源)を循環利用することが当たり前という地域になっていることでしょう。関係者はまさに「未来は我々である」という実感を得て、日々誇りを持って活動しています。


南三陸BIO 生ごみに関する一般廃棄物処理業許可を取得


南三陸BIOで、同町の生ごみに関する一般廃棄物処理業許可を6月21日付けで新たに取得しました。

これにより町内のホテルや飲食店などの事業者から生ごみの処理を受託することが可能となり、町内飲食店などで出た生ごみから液肥を作り、液肥から米や野菜を作り同町内の飲食店などに戻すリサイクル・ループなどが可能となります。

地域資源・地域経済が同町内で循環する仕組みが出来ることになり、同町のバイオマス産業都市構想の具現化が進みます!

アミタグループからのお知らせ

< 会長熊野のそっ啄同時 「希望を感じるために。」 >
今回のイギリスのEU離脱は、新しい市民革命の始まりかもしれません。

< 大学研究室を対象とした共同勉強会を開催 >
アミタグループは大学研究室を対象とした共同勉強会を6~8月で随時開催します。産学協働のネットワーク構築および学生の環境ビジネスへの興味喚起を行います。

< 熊本地震復興支援「ひと・つながり募金」の御礼とご報告 >
アミタグループは、4月から5月にかけて熊本地震の被災救援や地域復興支援を目的とした「ひと・つながり募金」を募集しました。全国各地より、多くの皆様から温かいご支援と被災地への応援メッセージを賜りました。皆様のご協力に心より御礼申し上げます。

< 熊本地震支援・災害ボランティア活動を実施 >
アミタグループは、5月28~30日7月16~18日、熊本県上益城郡益城町にて、地元ボランティア団体RQ九州の協力のもと倒壊した家屋や外壁の瓦礫撤去や地域の方の住居の片づけなどを行いました。

スタッフ雑記「光と風のアクアリウム」

旧持続研オフィスは京都にある築150年の町家を改装したものです。
ITインフラはもちろん、電気も水道もガスもない時代の建物で発足から6年余りの活動を展開していました。


いま、その町家オフィスは「風伝館」と改称され、志ある人たちが集うサロンとして1階をコミュニティスペースに、2階をアミタグループの事業や理念を紹介するミュージアムとして一般に開放されています。

入口から入ると、天井からの陽光が差し込む吹き抜けの上りかまちがあり、そこに大きな水槽のアクアリウムが展示されています。長さ1.8メートル、高さと奥行きがそれぞれ60センチもあります。

アクアリウムの住人は、すべて琵琶湖西岸の水辺から採集されてきたもの。ギンブナや二ゴロブナの子や、タナゴの仲間、清流に住むシマドジョウや、ハゼの仲間のヨシノボリ、ヌマエビなどの甲殻類、カワニナなどの巻貝も暮らしています。

水底の砂地から生えている水草は、琵琶湖固有種のネジレモです。DNAの螺旋のような形をした葉を水面に向けてゆったりと伸ばしています。

ところで、このアクアリウムには、水中に空気を送るポンプも、水の汚れを除去するろ過装置もありません。あるのは天井からの限られた陽光を補うためのライトだけ。夏場は、ごく弱い風を水面に送る扇風機が加わります。

このアクアリウムに、200匹ほどの小魚たちが元気よく群泳しているのです。水草の光合成と魚たちの呼吸、そして微生物の分解活動が調和した空間は、持続可能な循環社会の実現を社是とするアミタグループの理念を表現するものとして展示されています。


このような田園の用水路で水生生物を採集して大切に輸送します。

この方式のアクアリウムは「バランスドアクアリウム(調和水槽)」と呼ばれ、ノーベル賞を受賞した動物行動学者のコンラート・ローレンツ博士が、その著書「ソロモンの指環」の中で一章を割いて紹介していることから「ローレンツ式アクアリウム」とも呼ばれています。

私がローレンツ式アクアリウムの「失敗しない作り方」をアウトドア雑誌「BE-PAL」で紹介したのは、もう22年も前のこと。その記事を書く際に作成した当時のアクアリウムは今も健在です。この間、水槽の水を全面的に交換したのはわずか2回だけ。ええ、22年間で2回です。あとは蒸発した分の水を補うだけで十分なのです。

いわゆる熱帯魚愛好家など、アクアリウム飼育を趣味とする方々は、この方式のアクアリウムがなぜろ過装置もなく、かなりの密度の魚が健康に生活できるのかを大変不思議がります。実際に試みて失敗し、これは非常に限られた条件でしか成立しない特殊なものだと結論付けたりもします。

魚の排せつ物などの汚れを好気性の硝化バクテリアが分解する過程までは理解されるのですが、分解された硝酸を窒素に分解して完全に無害化するには嫌気性バクテリアの活動が必要です。一つの水槽で好気性と嫌気性のバクテリアが共存できるわけがない、というのがアクアリストたちの考えです。しかし、実際はいとも簡単にできるのです。水槽の底砂を十分に厚く敷き詰めるだけで、そこが嫌気性バクテリアの安住の地となります。


底砂で硝酸から分解された窒素を水槽外に放出する「脱窒」を促すために、嫌気性バクテリアの活動が高まる夏場に水面にごく弱い風を当て、さざ波を立てれば完璧です。自然の風が当たる屋外に水槽を置いていれば、扇風機を当てる必要もありません。これが「光と風のアクアリウム」のシステムなのです。

名著「ソロモンの指環」は学術書ではありませんので、技術的な詳しいノウハウまでは紹介されていません。しかもローレンツ博士は詩的な表現を好む方なので、 時に致命的な誤解を生んでしまうことがあります。たとえばこんな風に。 『それはほとんど金がかからず、しかも実に驚異に満ちたものである。一握りのきれいな砂をガラス鉢の底にしき、そこらの水草の茎を二、三本さす。』(ソロモンの指環 第二章より)はい、間違いは「一握りの」です。正しくは「がっつり分厚い層をなす分量で」です。

完成されたローレンツ式アクアリウムは、いつまでも眺めていたくなるほどの癒しを与えてくれる空間です。もし風伝館の近くにお越しの際は、ぜひご覧になって頂ければと思います。

(本多)