メールマガジン

  1. ホーム
  2. メールマガジン
  3. バックナンバー
  4. 持続研通信 No.70 紫陽花号

持続研通信 No.70 紫陽花号

南三陸より

みなさま、こんにちは。アミタ持続研の島津です。
ついこのあいだ春になったと思っていたら、もう夏の気配が感じられます。早いですね。

さて、今回の持続研通信・紫陽花号は、南三陸でのシンポジウム開催のご報告や、パラオ共和国との協定調印の話題などをお届けします。
どうぞご一読ください。

南三陸シンポジウムのご報告

4月9-10日に南三陸町や環境省などと開催した「豊かな自然・人・社会を未来へつなぐシンポジウム 南三陸から世界へ。~持続可能な地域づくりへの挑戦~」
2日間の日程でシンポジウムと現地見学ツアーを行い、全国各地から約160名の方にご参加いただきました。
人と自然が共生する循環型社会について登壇者・参加者との間で自由闊達に意見交換され、未来を創っていくのは自分たち、ここから未来を変えていこう!という意識が共有された熱気のあるイベントとなりました。

詳細はこちら

パラオ共和国コロール州とのパートナーシップ協定に調印


アミタ持続研では、パラオ共和国での「島まるごと資源循環モデル事業の実現」にむけて調査を実施しています。
3月16日にはパラオ共和国コロール州と「包括的資源循環システム構築プロジェクト」の実現に向けたパートナーシップ協定に調印しました。
また、環境省の委託業務である「平成28年度 循環産業の国際展開による海外でのCO2削減支援委託業務」についても4月8日付けで契約候補者として選定されました。
予備調査から今年で3年目になりますがいよいよ具体的なかたちになってきました。
今後の展開にご注目ください。

詳細はこちら

南三陸町ASC養殖場認証取得者への認証取得伝達式


式典のあとは美味しい牡蠣がふるまわれました!

アミタがASC養殖場認証の審査を実施し、今年3月30日に認証を取得した「宮城県漁業協同組合 志津川支所」への認証伝達式が、ジョン ホワイトASC推進部長 ・佐藤仁南三陸町長・筒井隆司WWFジャパン事務局長ご列席のもと、5月18日に南三陸町『南三陸ホテル観洋』にて開催されました。

詳細はこちら


今年も南三陸町でトウキを定植


持続研通信ではたびたびご紹介している当帰(トウキ)。2012年から露地栽培をはじめて、今年で4年目になります。
おかげさまで今年も多くの方にお手伝いいただき、南三陸での定植を終えることが出来ました。 心をこめて一株一株、丁寧に植えていただいきましたので、今年もすくすくと茂ってくれることでしょう。順調に生育すれば葉は夏頃、根は秋から冬にかけて収穫します。
栽培期間中農薬不使用の、安全で貴重な国産トウキ。じわりじわりと広がっていますよ。

トウキについての詳細はこちら

「サスティナ・ビレッジ」でトウキ商品とお米を販売


アミタでは、5月3-4日に京都市岡崎公園で開催された『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真 2016』のサスティナ・ヴィレッジにブース出展しました。
「熊本地震復興支援マルシェ」では持続研がプロデュースを手掛けた高島市・加賀市のお米や、南三陸産トウキの関連商品を販売し、売上はすべて熊本地震への支援金として寄付しました。

詳細はこちら


未来開拓者ラヂオで「南三陸BIO」を紹介


アミタグループでは昨年春からラジオ番組「未来開拓者ラヂオ」を制作・放送しています。
第23回目となる今回の未来開拓者ラヂオは「地域の資源循環で未来開拓」と題してお送りしました。
ゲストに南三陸町にお住いの東北オープンアカデミー実行委員会の山内亮太さんと「南三陸BIO」所長の櫛田を迎え、南三陸町をもっと盛り上げていきたい、という二人の熱い気持ちを語っていただきました。 こちらからぜひお聴きください。
http://radiocafe.jp/201504005/episodes/2016-5-21oa/

放送局 :NPO法人京都コミュニティ放送(FM797京都三条ラジオカフェ)
放送日時:毎月第3土曜日 10:00~10:20
※放送圏は京都市内のみですが、過去放送分は上記URLのWEBページからいつでもお聞き頂けます。

アミタグループからのお知らせ

< 会長熊野のそっ啄同時 「希望を感じるために。」 >
 私の中にある生命は何に満足するのでしょうか?どんな価値観を求めているのでしょうか?
 少なくとも「貨幣」ではありません。
 「知識」でも無く、「家柄」や「世間体」でもありません。
 続きはこちら

< 2015年度年次報告書「アミタの価値のつくりかた」を発行 >
 アミタホールディングスは、このたび2015年度年次報告書を発行いたしました。アミタグループの目指す方向と活動実績、今後の取り組み目標等を1冊に取りまとめた内容になっています。
 ぜひこちらからご覧ください。

< 佐藤が環境シンポジウムに登壇します >
 6月14日仙台市で開催される「多様な主体による持続可能な地域づくり」を語る環境シンポジウム~(主催:環境省)にてアミタの代表取締役・佐藤博之が登壇し、バイオガス施設「南三陸BIO」を中心とした南三陸町での包括的資源循環システム構築に向けた取り組みについて発表します。
 詳細はこちら

スタッフ雑記「フクシマにつなぐ希望の苗」

昨年に続き、今年も石川県加賀市の湖北小学校で「お米づくり」の食育学習がはじまりました。
5年生の児童らが校庭の小さな田んぼで田植から雑草取り、収穫や脱穀までを学びます。昨年同様、加賀市が推進する「共生農業」の普及啓発の一環として、農薬も化学肥料も使いません。


昨年の秋、雨の中で行われた湖北小の発酵堆肥の散布作業

土づくりには、去年の5年生たちが秋の収穫後に、学校給食や一般家庭からの食品残渣から生まれた発酵堆肥を仕込んでいます。 共生農業は循環社会の不可欠な要素であることを学んでもらいました。

もちろん、今年の田植えに用いる苗は、昨年同様の「幻の米」水稲農林21号です。 太平洋戦争の真只中の昭和17年に北陸農業試験場で生まれた品種で、戦後の復興期に北陸や東北で広く栽培され、その美味しさは今も“伝説”として語り継がれています。

近代農法との相性が悪く「栽培が難しい」とされ、次第に後発の品種に押されて姿を消していきましたが、最後の生産地だったのが福島県のJAみちのく安達の管内農地。そこに種籾を求めて訪ねたのが2年前の秋でした。
JA担当者から聞いた言葉は「残念ですが、農林21号は昨年で生産を打ち切ってしまいました」というものでした。 福島原発事故から2年を経て、幻の米の生産地がついに途絶えてしまったのです。


現地農家の指導を受けながらの田植え作業

種籾は、福島県の農業試験場にも残っていませんでした。どうにか確保できたのが、茨城県つくば市の農業生物資源研究所(ジーンバンク)に遺伝子保存用資源として残されていた一握りほどの種籾でした。

去年の5年生と共に育てた種籾から得られた籾は30㎏足らず。 それを「かが有機農法研究会」の有志メンバーが合計130㌃の圃場で育てます。 果たして生産圃場でも無事に育つのか、暗中模索の米づくりが始まった最中に、最後の生産地だった福島県から思わぬ知らせが入りました。


「農林21号を3年前まで作っていた地域なのですが、もう一度復活させたいと願う有志の農家が種籾を探し続けても、どうしても見つかりませんでした。そんな中で、アミタのホームページから加賀市・湖北小の取り組みを知りまして・・・」


電話の声の主は、二本松市の前市長・三保恵一さんです。前号の持続研通信のスタッフ雑記を読まれてのお問い合わせでした。二本松市は原発事故で役場ごと避難した浪江町の仮庁舎を迎え入れ、市独自の内部被曝検査を児童に行うなど、原発事故の最前線ともいえる地域です。


福島から駆け付けた農家たちを交えた記念写真

「・・・北陸で生まれたこのお米がよみがえれば、生きものたちがたくさんいる昔の田んぼの姿を、石川県にとりもどすことができるかもしれません。そして、いつかきっと、福島県でもよみがえらせることができると思います」 昨年の授業で述べた言葉が、こんなに早く展開を迎えるとは思いもよりませんでした。

福島からの問合せの趣旨を加賀市の農家グループに伝えると、「地域の子供らが育てた種籾が福島の希望になるなら良いことだと思う。互いに交流しながら復活させればいい。苗はこっちもぎりぎりの量だけど、薄目に植えてなんとか渡せる分を確保しましょう。」 という意気に感じる答えが返ってきました。

そして湖北小学校の田植え日当日。二本松市からワゴン車で駆けつけてきた農家ら6名に有機栽培用に大きく育てられた6枚の苗箱が子供たちから手渡されました。 「農林21号が、東北でも元気に育つことを願っています」 子供たちからの言葉に、前市長の三保さんも感極まった面持ちでした。


湖北小学校の生徒たちに福島からの感謝状が送られました

加賀と福島の農家はさっそく栽培談義をはじめています。 「コシヒカリと同じ条件で苗を育てたら、やったらと背が伸びるんよ。しかも茎が柔らかくて田植えしても苗が立たん。ハウスに入れない方がよかったかもしれん。」 「農林21号の苗はハウスじゃなくて露地の苗代で育てていました。ここまで大きく伸びた苗は、うーん、ちょっと見たことないな。」
暗中模索で試行錯誤の冒険に、心強い経験者のパートナーが現われたようです。

希望の苗がつなぐ加賀と福島。
“伝説の米”の復活と共に、共生農業と循環社会も広がっていくことを期待したいと思います。

(本多)