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山の価値を「表現をしていく」必要性を感じました

地域資源の価値増幅南三陸FSC林業

宮城県本吉郡南三陸町 株式会社佐久 専務取締役 佐藤 太一さん

東日本大震災後、30歳になってから実家の林業にはいることを決意した佐藤太一さん。南三陸町のおよそ270haの山を所有・管理している会社で、2015年に宮城県初のFSC®森林認証(FM認証)を南三陸森林管理協議会の一員として取得。斜陽産業のイメージが強い林業をより広い視点でとらえ直して、新しい取り組みに向けて動いておられます。


森・里・海・街。人と自然。つながりの中で生きる「豊かさ」。

県外の大学院で宇宙放射線の強度変動を研究していた佐藤さんですが、震災後に家業である林業の道に入ることを決意されました。


(写真:(株)佐久が管理する森)

(写真:(株)佐久が管理する森)

佐藤さん:林業を始めてからわかったことだけど、自然環境や生態系も本当に全て多様性なんだと思った。木の使い方にも多様性を持たせてあげることで、森や山の価値がどんどん高まっていく。


佐藤さんは、山や森が手入れされることにより里や川、海に良い影響を及ぼすことも林業としての価値として考えるようになったのです。


佐藤さん:ちゃんと機能するような空間に手入れしておかないといけない。森が荒れると、結局は木材生産だけでなく水にも影響も与えてしまう。そうすると、下流の田んぼや海にも影響が出ると思う。南三陸町は分水嶺に囲まれていて、全ての水源が自分の町にある全国的にも稀有な自治体です。山から海までの全ての水源をコントロールできるということは、山で良い取り組みをすることで里や海にも良い影響を与えることができるんです。

林業の大切さと共に、林業に携わる「魅力」を、佐藤さんは次のように話します。


(写真:見学者へ森の説明を行う様子)

(写真:見学者へ森の説明を行う様子)

佐藤さん:先代から引き継いできた自然の資本をいかに持続させていくか、100年先まで見据えるのも林業の楽しさです。でも今植えたものは一応30年くらいで木材として出せる。私は30年後には60代。80歳の時にはちょうどよい頃合いの50年生の木材を伐れるんです。そう考えるとまだ間に合う。だからつなげる楽しみだけでなく育てた楽しみも味わえるというか。


100年以上前の森が手入れされていたかどうかも、木を見るとわかると佐藤さんは言います。


佐藤さん:手入れをしなかったら年輪が等間隔にならないのです。年輪は嘘つかない。データベースですよ。(笑)時間軸がそのまま表れるから、手入れをサボったらすぐバレるんです。だから山は舞台であり、自己表現の場でもあるわけです。木材だけでなく、山全体の空間も。どう間隔を空けると、どう日が当たるのか、下草がどう生えるのかなど。そこがすごく楽しい。林業の魅力ってそこですよね。


山はこの土地で半永久的に残せる財産。その価値を「表現していく」必要性を感じました

2015年10月に宮城県初のFSC®森林認証取得。しかし震災前に取得検討した際には認証は不要と考えていたのです。


(写真:FSC®FM認証本審査の様子)

(写真:FSC®FM認証本審査の様子)

佐藤さん:震災の津波によって町がなくなりました。残ったのが山です。例えばうちは家や蔵、全部なくなり土地もなくなったけれども、山だけは残った。つまり山は最後に残るもの、この土地で半永久的に残せる財産だともいえる。それに僕自身が気づいた。おそらく周囲の先輩方も気づいたと思います。

結局、人間は生態系の一つとして生きているにすぎないから、林業をやる上でも生物多様性や環境に配慮して計画を立てる必要性を感じたんです。そしてなにより南三陸の林業を発展させていく為に、私たちの取り組みの価値を「表現していく」ことが必要だと皆が感じたのです。

そして最後に背中を押してくれたのは「バイオマス産業都市構想」を掲げていた町の姿勢ですね。豊富な森を材木や燃料など様々な方法で価値化しようとしています。でもそれが環境に負荷を与えてしまったり、持続性の乏しい活動だと実態が伴わないですからね。

認証取得に際しては、まず制度について理解してもらうのに時間が必要でした。環境面や生産性など、これまで意識していなかった部分についても「これは正しいか」を考えるようになりました。しかし、取得効果はラベルによる価値の表現だけでなく、取得過程やその後の継続にも感じているといいます。

佐藤さん:FSC®の認証マークが付けられることは取得の価値なのですが、取得の過程とその後の継続にすごく意味があると思うんです。いわゆる第三者、外の人から認めてもらうために取り組む。そしてその価値を内側の人にも説明する必要がある。外に伝えると、自分の中で抽象的・潜在的だったものが少しずつ明文化・具体化されていくし、自分だけでは気づかなかった価値も可視化されていく。

だから、「着々とやれる事をやる」ということはとても大切だと思いますが、その価値を表現していく。それによって外に価値が伝わり、その過程で様々な新しい価値に気付いていくということもFSC®森林認証取得で得られた経験でした。


佐藤さんには認証取得後の展開として新たに目指す価値づくりがあると言います。


(写真:佐久の木材を使った製品)

(写真:佐久の木材を使った製品)

佐藤さん:普遍化・数値化できない贅沢を価値にしたいと思っています。一点ものの美しさや素晴らしさを個性に生かす付加価値づくりです。正直FSC®を継続することは楽ではないし費用もかかります。だからこそ、まだ価値化されていない部分をいかに表現するかが大事だと思います。

今は2016年内に完成を目指す南三陸町庁舎で「FSC®プロジェクト認証」で全体認証の取得を南三陸町役場と共に目指しています。これもまさにバイオマス産業都市構想を構想のまま終わらせない取り組みの1つですよね。そしてこういった取り組みを通じて、「FSC®とっているのが当たり前」というところまでいきたいんです。


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動画 いのちめぐる~百年後の森のこと~



プロフィール


佐藤 太一(さとう たいいち)さん
株式会社佐久 専務取締役/合同会社MMR 代表社員

1984年生まれ。理学博士。大学院で宇宙放射線の強度変動を研究していたが、震災後、家業を継ぐために帰郷。2015年10月には林業団体「南三陸森林管理協議会」で宮城県初の国際森林認証(FSC®)を取得。「南三陸バイオマス産業都市構想」の実現に向けて地元・南三陸の様々な業種が繋がって生まれた合同会社MMRの中心を担う。


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