アミタ(株)がNECソリューションイノベータ(株)と共同実施した、奈良県生駒市の「日常の『ごみ出し』を活用した地域コミュニティ向上モデル事業」が終了。住民主体の持続可能なまちづくりに向けて、一定の有効性が検証されました。

お知らせ

アミタ株式会社は、NECソリューションイノベータ株式会社と共同で、奈良県生駒市にて「日常の『ごみ出し』を活用した地域コミュニティ向上モデル事業」の実証実験を実施しました。
本実証では、ごみの分別・持ち込みという日常行為をきっかけに多様な市民が集い、コミュニティ活動への参画を促進する拠点を約2カ月間設置しました。本拠点が、全市民が当事者となる持続可能なまちづくりに資する有効性等を検証した結果を、ご報告します。

「日常の『ごみ出し』を活用した地域コミュニティ向上事業」実証実験の概要


  • 目的(検証内容)

    ごみの分別・持ち込みという日常行為をきっかけとして多様な市民が集い、コミュニティ活動へ参画しやすい拠点(週6回開催の「拠点ステーション」および週2回開催の「地区ステーション」の2種)を設置し、その有効性・実現可能性等を実証する。

  • 期間

    2019年12月20日(金)~2020年2月28日(金)(約2カ月間)

  • 検証方法

    ごみの回収量・品質調査、参加登録カードおよびアプリの登録数・利用状況、参加登録者へのアンケート・ヒアリング調査等を基に検証。

    ※アンケート有効回答数:回答されたアンケート(事前アンケート176名、事後アンケート87名)のうち無回答のものを除く。

  ※本実証実験の詳細はこちらをご覧ください。

結果

①参加登録者数・継続希望度


  • 利用登録者数

    288名(うち拠点ステーション249名、
          地区ステーション39名)

  • ステーションの継続意向

    ステーションの継続について「ぜひ続けてほしい」「まあ続けてほしい」「一部機能だけ続けてほしい」のいずれかを選択した回答者の割合は、拠点ステーションでは91%、地区ステーションでは83%でした。
    ステーションへの意見・感想としては「環境問題に日常的に貢献できる」「ごみ問題を考えるきっかけになる」「地域交流のきっかけになる」といった声が寄せられました。


②ごみの回収量・品質および環境意識に関する調査

  • 参加者1人当たりの回収量

    1日当たり0.6㎏、期間合計30.8kgの持ち込み


  • 可燃ごみの分別品質

    2017年に同市で実施された可燃ごみ組成調査結果では、可燃ごみ中の資源化物(適当に分別・収集を行うことでリサイクル可能になるもの)の割合が約72.6%であったのに対して、本調査では約66.4%と減少傾向がみられました。
    ※実証地区のうち3拠点にて可燃ごみサンプルから無作為に10袋ずつ抽出し、資源化可能物の収集品目ごとの
     重量を調査
    ※2017年の調査結果は「生駒市ごみ組成調査報告書」(平成30年3月)を参照、ただし調査対象地区が
     異なる https://www.city.ikoma.lg.jp/cmsfiles/contents/0000013/13402/sryou2-4.pdf

  • 生ごみの分別品質

    生ごみ資源化の実現可能性を検証するため、以下3パターンの資源化を想定し、それぞれの不適物を定めた上で、ステーションにて回収された生ごみの組成および資源化可能適合率を調べました。
    結果、回収した生ごみの分別品質は非常に高く、資源化(堆肥化またはメタン発酵化)した場合の適合率は9割以上となりました。

資源化方法処理基準に対する可能適合率(平均)
堆肥化99.9%
メタン発酵化99.5%
メタン発酵化(同市内の既存処理プラントにおける処理)97.3%

  ※上記3通りの資源化を想定した場合の各不適物を定め、ステーションに持ち込まれた生ごみ全重量に対する
   不適物率を調査。同市内の既存処理プラントは「エコパーク21」を指す。

   

  • リユース品の回収・交換

    地区ステーションではごみの回収(18品目)に加え、リユース品・フードドライブの回収を実施。リユース品については、計696回の持ち込みが行われました。
    ごみ・リユース品を持ち込んだ住民の方には、LINEと連携したスマートフォン専用アプリ、またはカードを通して「感謝ポイント」を付与しました。またリユース品の持ち込み・引き取り情報を、同アプリにてリアルタイムで発信しました。



  ※フードドライブ:家庭で余っている食品を持ち寄り、福祉施設・団体への寄付や福祉事業等で利用すること
  ※獲得した「感謝ポイント」は実証期間中、リユース品・自治会活動等への寄付・他の参加者への寄贈等に
   交換可能

  


  • ごみの持ち込みの継続性

    「ステーションへのごみの持ち込みを続けることができましたか?」という問いに対しては「(実証期間中)ずっと続けられた」との回答が8割以上(拠点ステーションでは87%、地区ステーションでは100%)でした。


  • 環境意識の変化

    参加住民の「環境問題への関心」を実証実験への参加前後で確認し比較したところ、アンケート回答者の28%について、関心度の向上がみられました。


③ソーシャルキャピタル(社会関係資本)に関する効果

ステーションが持つコミュニティ機能により、住民間の新たな関係性の構築や地域への参画機会創出に一定の効果がみられました。

  • 多世代交流、地域コミュニティへの参画促進

    ごみ出しという日常行動をきっかけに、乳幼児から小学生、その両親やシニア世代まで多様な年代の住民がステーションに来訪。住民の方からは「ステーションがあることで、異世代間の交流が増えた」「子どもたちの見本になる大人、地域、環境をしっかり作る場として良い」といった声が多数寄せられました。
    またステーション設備のDIYや掲示物の制作、Facebookページ(こみすてノート)の設立、運営手伝い等、子どもから大人まで多くの住民の方による主体的な運営参画がみられました。ステーションや隣接の自治会館にて「子ども食堂」をはじめとする住民主催のイベントも多数開催されました。




  • 外出頻度の向上

    1日あたりの資源持ち込み回数をステーション来場者数が上回る傾向が高く、ごみ出し以外の動機による来場者が大半であることが想定されます。
    また、参加住民の「外出頻度」を実証実験への参加前後で確認し比較したところ、アンケート回答者のうち25%に外出頻度の増加がみられました。 ごみの持ち込みの他に、ステーションおよび隣接施設にて開催された地域イベントが、外出の動機になったと考えられます。

  • 地域内の関係性構築におけるICT活用の可能性

    本実証ではスマートフォン専用アプリおよびカードの2種類の方法で参加を受け付けましたが、前者による登録者数は後者の約2倍となりました。なおアプリ利用者の54.1%が60歳以上であり、スタッフによる指導や資料等のフォローがあれば、シニア世代も問題なく利用できることが明らかになりました。

     ※地区ステーションではカードによる参加登録のみ受け付け



考察

地域住民である実証参加者からの受容性や主体的な参画が観察され、地域のコミュニティ強化や課題解決に対する一定の有効性が示されました。同時にSDGsへの対応をはじめとする社会的要請を受けて、省庁・民間企業等の視察や関心が多く集まり、循環型社会形成のソリューションとなる可能性が期待されています。

今後の動き

アミタは、同市に対してより長期的な提供に向けて、ステーションの商品性改良(住民の継続参加率・資源収集量の向上、住民主体の運営体制等を実現する設計)や、費用面の課題解消に取り組みます。また、他自治体、他企業との連携可能性を検討し、資源循環面の機能開発を進めて参ります。

関連情報

2020/04/14 生駒市実証実験レポート|地域の課題をトータルで解決する「MEGURU STATION」

参考リリース

2019.12.16 アミタ(株)、NECソリューションイノベータ(株)、奈良県生駒市で実証実験を共同開始
2019.12.16 アミタ(株)、奈良県生駒市の「日常の『ごみ出し』を活用した地域コミュニティ向上モデル事業」を受託!

アミタグループの地域デザイン事業について

アミタグループはこれまでに全国60ヵ所以上における地域支援を実施してきました。これらの経験やノウハウを活かし、地域内の未利用資源を活用し、森・里・海・街の互恵関係を創出します。さらに域内の資源循環を叶える中核インフラを整備し、雇用創出・産業創出に貢献します。
【アミタホールディングス(株):資本金474,920,000円(東証JASDAQ市場上場:2195)】

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