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「つながっていることがすごいんだ!」と気づくんですね。

資源循環への基盤作り南三陸南三陸BIO

一般社団法人南三陸研修センター 安藤 仁美さん

入谷地区の研修宿泊施設「南三陸まなびの里 いりやど」を拠点とする南三陸研修センターは、各地から視察研修に訪れる大学や企業を受け入れ、町民向けの勉強会も催している。視察研修のコーディネーターを務める安藤仁美さんにお話をうかがった。
※(本記事は2017年12月8日に発行した電子書籍「バケツ一杯からの革命」の取材を基にした記事です。写真は視察ツアーを案内している様子。)


循環型社会では地域の皆に役割があって、社会の役に立てるんだということを持ち帰ってほしい

漁業体験や森での間伐体験、里の暮らしの知恵や復興を目指す町の取り組みなど、要望に応じて様々なプログラムを提供しており、南三陸BIOも町の資源循環事業の中核施設としてそのメニューに組みこまれている。ここを訪れる視察者の方々は何を感じ、何を学んでいくのだろうか?

安藤さん:「バイオマス産業都市構想の核となる施設といっても、単に発電エネルギーと生ごみ処理の機能面だけを見ただけでは、最初は価値や意味が理解できないでしょうね。とくに都市部で育った学生などは、地域社会とのつながりというものをなかなかイメージできないんですよ。」

多くがお金の対価としてサービス化された世界で育ち、消費者、受益者としての感覚が中心の若者たち。彼らにしてみれば分別は面倒だし、電力も60世帯分を賄えるだけのものにどれほどの価値があるのかと思うのも当然だろう。

安藤さん:「でも、BIOという施設単体の機能ではなく、分別をする住民や事業者、運送や液肥散布に関わる人たち、そして農家の方々がつながり合って、この取り組みに誇りを持っていること、液肥で循環社会が成立していることが伝わると、多くの人たちがつながっていることがすごいんだということに気付くんです。この小さな町で、皆が参加しないと地域が成立しえない役割をそれぞれが果たしているのが分かるし、役割があるから社会が回るということが分かるんですよ。循環型社会では地域の皆に役割があって、社会の役に立てるんだということを持ち帰ってほしいと思っています。」

消費者や受益者という立場ではなく、住民が参加者として取り組み、ごみを出す人も関わることで誇りを持ち、取り組みを自分のものにできる。そうした社会とのつながり方を知ることで、農林水産業を舞台とした他のプログラムとの相乗効果も表れているそうだ。

安藤さん:「例えば、お父さんが漁に出て、お母さんが弁当を作り、おばあさんが孫を見守っている。そういう家族の役割があってこそ生業が成り立つということを、初めて気が付く学生もいます。そうやって森里海の恵みを受けてきた南三陸の人々が震災から学んだことの一つが、資源循環を通じて自然から受けた恵みを返すということ。そして自分自身がその中で必要な役割を担うこと。それが昔からの当たり前のスタイルだったということに気付いてもらえる人が増えていますね。」

研修を受けた学生の口からは、「自分で動いて、自分の町を作ろうとしているところがすごい」、「どうしてこんなに動けるんだろう」という言葉がよく出てくるという。支え合うことが基本の地域コミュニティでは、そもそもそれが当たり前だったことに気づけば、貨幣経済だけで全て賄われている都会の消費者生活の脆さにも気づくことだろう。

「関係性を構築するインフラ」としての機能

企業の視察研修では「今やろうとしているマーケティングビジネスのイメージが、ここで出来ました」といった参加者の声も聞かれるそうだ。

安藤さん:「例えば高級化粧品の使用後の空き容器が中国などに転売され、中身を入れ替えた偽物が出回ってブランドの信頼が損なわれるという課題があるそうです。その解決策として、空き容器を回収する窓口をメーカー側で設けると共に、使ってみての感想をユーザーから集め、リピーターとなってもらうためのアプローチを仕掛けるというビジネス戦略ですね。そういう新しいビジネスチャンスを見出してくれる企業もいますよ。」

厄介な廃棄物だったものが、回収を通じてユーザーとの関係性を構築させるツールとなるというソリューション戦略は、BIOの循環システムの見事な応用解だろう。「関係性を構築するインフラ」としての機能は、視察研修者たちに適確な理解と成果をもたらしている。


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アミタは南三陸町のような住民主体の循環型の街づくりを官民連携で全国に展開したいと考えています。本取り組みに興味を持たれた市町村職員の方、企業の方がいらっしゃいましたら、まずは御依頼・ご相談窓口にご連絡ください

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無料電子書籍「バケツ一杯からの革命」


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南三陸BIOをはじめとする視察ツアー


南三陸研修センター(南三陸ラーニングセンター)は、「南三陸BIO」を中核にした南三陸の森里海の連環を、幅広く学ぶことのできる3つのプログラムを提供しています。

詳細・お問い合わせ:https://bio.ms-lc.org/



プロフィール


安藤 仁美 さん

安藤 仁美 さん
南三陸研修センター


1988年愛媛県生まれ。2011年3月、大学卒業と同時に内定取り消しにあったことをきっかけに、南三陸町で支援活動を開始。2012年より、大学職員として地域連携に従事し、東京と南三陸の二拠点生活を送る。2015年4月より移住し、南三陸研修センターのスタッフとして働いている。


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